宮崎県外科医会秋季講演会・日本臨床外科学会宮崎支部会報告
宮崎県外科医会会長 白尾一定
2019年10月25日(金)宮崎県医師会館にて宮崎県外科医会秋季講演会・日本臨床外科学会宮崎支部会が開催されました。会に先立って、経皮的気管切開等のハンズオンセミナーを開催しました。今回の特別講演は、鹿児島市立病院消化器外科科長の柳政行先生の「内視鏡外科技術認定取得への情熱~鹿児島編から」というタイトルにて講演されました。先生は自分が技術認定を取得した後は、「鹿児島で一番の、内視鏡外科手術の助手になる」そして、後輩を育てることに情熱を注がれ、さつま鏡塾をはじめ、オペナーシングセミナー、鹿児島ラパロシティフォーラムなど多くの研究会を企画され、若手の教育をされています。内視鏡外科技術認定取得に向けた取り組みの中で、外科医としての知識、技術の向上だけではなく「人」としても成長することが大切で、手術に対する心構え、モチベーションの維持、少ない症例で自身をつけるために、労を惜しまず助手・カメラマンをすることなどが大切であることなどを教えて頂きました。宮崎においても、「さつま鏡塾」を見習って、例えば「ひむか鏡塾」などの鏡視下手術を勉強し合う研究会を設けたいと思いました。この講演会が良いきっかけになることを望んでいます。ご参加有難う御座いました。
宮崎県外科医会秋季講演会
内視鏡外科技術認定取得への情熱 ~鹿児島編~
鹿児島市立病院消化器外科科長
柳 政行
外科医が、手術が上手くなりたいと思うのは当然ですが、「上手い」の評価は難しいです。日本内視鏡外科学会の技術認定は、ビデオ審査で客観的に「内視鏡外科手術を安全かつ適切に施行する技術を有しかつ指導するに足る技術を有している」ことを“学会”が評価・認定してくれる、なんとも有難く、名誉なものです。本当の実力とは異なるかも知れませんが、ある一定レベル以上の技術習得者であるとの信頼は得られ、自信となります。
この制度(消化器外科・一般外科)は、合格率が約30%という厳しさながらも取得希望者は多いです。なぜなら、内視鏡外科手術の技術は進歩し、限りなく開腹手術に近づき且つ凌駕しようとし、また患者さんからの要望も増加し、外科医にとって開腹手術の何倍もの熟練を要したとしても、この技術を持たない消化器外科医は、近い将来、その存在意義が危ぶまれると予測されるからです。近年示された消化器のロボット手術導入指針において、術者条件に技術認定取得が含まれているのが一例です。
技術認定取得は、合格率が示すように容易ではありません。各自の相当なる「情熱」と「努力」が必要です。経験で得る知識や技術だけではなく、テキストやビデオでの勉強、ドライボックスでのトレーニング、ビデオクリニック・講演会・学会への参加、動物やカダバーなどの講習会参加、多施設の手術見学など、習得方法は多岐にわたります。が、講演会や講習会が行われる地は、南九州からは遠いことが多いです。そこで、鹿児島では2008年より「さつま鏡塾」と題したビデオクリニック・講演会を50回以上、その他にも結紮縫合セミナー、大学医局主催の動物施設でのトレーニング、コメディカルスタッフ対象のオペナーシングセミナーなどを開催し、若手の育成や鹿児島全体のレベルアップに取り組んできました。現在、鹿児島には20名以上の技術認定取得者がいます。
鹿児島の内視鏡外科のこれまでの経緯と現状を紹介させていただき、これからの宮崎の内視鏡外科の発展のための御参考になれば幸いです。