2023年8月

外科医会夏期講演会 若手奨励賞の選考結果について

令和5年8月4日に開催した外科医会夏期講演会の若手奨励賞につきましては、本会役員の投票により選考いたしました。
その結果、「集学的術前治療後に切除し、病理学的完全奏効を得た門脈腫瘍栓を伴う肝細胞癌の1例」の演題で発表された 坂元 紀彦 先生(宮崎大学医学部附属病院) が受賞されることとなりましたのでご報告いたします。

2023年8月4日 宮崎県外科医会夏期講演会 (日本臨床外科学会宮崎支部会)報告

宮崎県外科医会会長 白尾一定

2023年8月4日宮崎県医師会館にて宮崎県外科医会夏期講演会、日本臨床外科医学会支部会を会場およびWebにて開催しました。会場29名、Web31名の参加でした。新型コロナが拡大し週末には台風6号が九州に接近する予測の中での開催でした。社保指導は潤和会記念病院の岩村威志先生より、保険上は疑い病名での治療は出来ない、CEA高値などの病名は不可、疑い病名での毎月のHbA1cは不可、CRP測定での炎症病名の必要性、ヒルドイドソフト軟膏の病名、足白癬は検査が必要、アミノレバン等には肝性脳症の病名が必要、術後再手術は当日は算定不可などの内容でした。「次世代の臨床外科医のための特別セミナー」はJCHO宮崎江南病院の白尾貞樹先生がスライドで説明し、宮崎大学外科(当時)の山田隆盛先生、県立延岡病院の廣松昌平先生が感想を述べられました。外科に入るきっかけになったことを嬉しく思います。国内外科研修は宮崎大学外科の樋口和宏先生が癌研有明病院の大腸外科に短期留学され、多くの内容を報告して頂きました。これからのご活躍を期待いたします。一般演題は、11演題で7演題から「若手奨励賞」を投票にて決定します。全ての発表は全国学会に出してもおかしくない内容でした。後日理事等にて投票し「若手奨励賞」を選定しHPにて発表させて頂きます。「熟練外科医から若手外科医へ」は、川名クリニックの川名隆司先生の講演でした。「研究のススメ」、「医政への係り」、「医療版SDGs」などの内容で、宮崎県外科医会HPに講演内容を視聴出来るようにしますので、皆様是非ご視聴下さい。特に「Why」から始まり、問題を解決していく過程の大切さ、医師会活動の重要性、持続可能な地域医療、外科医としてのワークライフバランス等多くの教訓を頂きました。ご講演頂き大変感謝しています。2026年日本臨床外科学会を宮崎大学の七島篤志教授が開催されることに決まり、七島教授より開催の経緯と今後の方針について報告して頂きました。宮崎県外科医会は日本臨床外科学会宮崎支部会ですので、全力で応援します。夜遅くまでの開催でしたが、発表、座長の先生方、司会をして頂いた副会長の宮本耕次先生に感謝いたします。次回は、10月6日の秋期講演会です。皆様のご参加宜しくお願いします。

次世代の臨床外科医のための特別セミナー報告

JCHO宮崎江南病院 白尾 貞樹 先生
宮崎大学医学部附属病院外科 (当時) 山田 隆盛 先生
宮崎県立延岡病院 廣松 昌平 先生 

202224日から5日にかけて品川のグランドプリンスホテル新高輪で第11回次世代の臨床外科医のための特別セミナーが開催された。コロナ禍により2年ぶりの開催となった。出席者は役員含め123名であり、出席者は後期研修医が多く初期研修医は11名であった。24日の講演は舘田一博先生が「COVID-19との対峙」、康永秀生先生が「これからの外科医に必要な臨床疫学研究の基礎」について講演された。その後、手術手技パネルでロボット胃切除術、腹腔鏡下右半結腸切除術、腹腔鏡下胆嚢摘出術、腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術について後期研修医の先生がビデオ供覧し、アドバイス頂いた。その後の懇親会では他県の研修医の先生、エキスパートの先生と情報交換する機会を得た。翌25日には福原進一先生が「世界にはばたけ、日本の若手外科医」、齊藤光江先生が「私が理想とする外科医」、馬場秀夫先生が「外科学の未来を拓くために」の講演があった。いずれの講演も刺激的な内容であり、新たな気持ちで帰宮することができた。

国内外科研修報告

宮崎大学医学部外科学講座 樋口 和宏 先生

がん研有明病院大腸外科での研修を終えて

令和5年1月10日から2月3日までの4週間、日本臨床外科学会国内外科研修制度を用いてがん研有明病院大腸外科で研修を行った。

研修では手術見学、カンファレンスへの参加に加え、数例スコピストとして手術に参加した。連日3~6例の大腸癌定例手術に加え、婦人科を中心とした他科の応援など、症例数は豊富であった。スタッフの先生方は膜1枚レベルでの正しい剝離層を徹底した手術指導を行いながら、ほとんど出血なくスムーズに手術を進めていた。下部直腸癌の術前治療後で剝離層の選択が難しい症例も、術者は有効な視野展開を行って正しいラインで出血させずに手術を進め、それを阿吽の呼吸で助手がサポートしており、チームとして習熟していると感じた。

カンファレンスへは、消化器外科カンファレンス、大腸外科カンファレンスに参加した。消化器外科カンファレンスでは各グループの術前症例が1症例あたり英語で要点をPowerPoint1枚、発表時間1~3分以内にまとめられており、症例数が多くてもテンポよく発表が進んでいた。また、グループの垣根を越えて質問が活発な議論が行われていた。大腸外科カンファレンスでは他科とも検討が必要な症例の提示と術後報告が行われていた。時間外にも関わらず、呼吸器・肝臓外科や化学療法科、放射線科も加えて多数の症例検討を行っており、病院一体となった治療体制を目の当たりにした。

レジデントは多忙な中でも周術期管理・手術手技の質を上げるべく、密に連携とっておられ、手技に関しては内視鏡外科技術認定医取得者・ビデオ提出者がロボット支援下手術の部分執刀を任されていた。

同世代の先生方がレジデントとして奮闘する姿やエキスパートの先生方の質の高い手術を数多く見学したことは、この先の目標設定に大きく繋がった。

最後に、ご推薦くださった宮崎県支部長白尾一定先生、宮崎大学外科学講座肝胆膵外科学分野七島篤志教授、快く送り出してくださった当科教室員の皆様に厚く御礼申し上げます。

熟練外科医から若手外科医へ 

川名クリニック 院長/宮崎市郡医師会 顧問 川名 隆司 先生

私は熟練外科医ではありませんが、「先輩から後輩へのメッセージ」として、以下の三点をお伝えします。

一つ目は「研究のススメ」です。研究の一番の魅力は、世界の誰も知らない事実や真理、即ちNeues(ノイエス)を自分だけが見ている、知っているというワクワク感であり、これは非常にエキサイティングです。しかし、その新しい知見を論文にまとめ、発表しないと評価されません。論文を書くことは相当な労力を要しますが、その「論文を書くことの意義」について、私見を述べたいと思います。

二つ目は「医政への係り」です。何故、我々医師が医政に係る必要があるかをお話しします。また、これに関連して、医師会と医師連盟についても触れ、両者の違いや医師会に入会することのメリット、そして宮崎市郡医師会の公益事業等もご紹介します。

三つ目は「医療版SDGs」として、持続可能な地域医療、持続可能な外科医について言及します。持続可能な地域医療のためには、官(行政)・民(医師会や多職種)・学(宮大医学部)の協働が肝要です。また、持続可能な外科医に必要なことは、労働環境の改善、労働に見合う対価、On-Offの切り替えと考えており、それぞれ具体的に解説します。

外科の専門性や手術のスキルアップに関わる内容ではありませんが、若い先生方のキャリア形成に、多少なりとも参考になれば幸いです。