2024年8月2日 宮崎県外科医会夏期講演会 (日本臨床外科学会宮崎支部会)報告

宮崎県外科医会会長 白尾一定

202482日金曜日宮崎県医師会館にて夏期講演会を会場とWebにて開催しました。参加者は、会場52名、Web20名で、合計72名でした。社保指導は、潤和会記念病院の岩村威志先生により、①疑い病名での治療は査定、②超音波検査時は部位の記載を正確に行う、③腫瘍マーカーは、癌の病名あるいは疑い病名が必要で高CEA血症などの病名では査定、④CRP測定時には感染症の病名が必要、⑤アミノレバンENは肝性脳症の病名が必要などを説明して頂きました。次世代の臨床外科医のための特別セミナーには、20242月3・4日に東京・品川で第12回が開催され、宮崎大学医学部外科の坂元紀彦先生、荒木裕介先生、県立延岡病院の鈴木裕紀子先生が参加され、手術手技や臨床研修、働き方改革、外科医としての指針などのセミナー内容を報告して頂きました。国内外科研修には、宮崎大学医学部外科の落合貴裕先生が独協医科大学上部消化器外科に202394日から929日まで4週間研修され上部消化器外科の手術だけでは無く、下部消化器の手術見学や韓国での学会参加など、多くの研鑽を踏まれていました。ご報告有難う御座いました。

一般演題は15演題で、卒後5年目までの「若手奨励賞」候補は10演題でした。座長は古賀総合病院後藤崇先生、宮崎市郡医師会病院旭吉雅秀先生、宮崎大学医学部心臓血管外科阪口修平先生、県立宮崎病院三浦敬史先生にお願いしました。幅広い分野の発表で、各演題について活発な議論がなされました。時間を守って進行して頂き有難う御座いました。

「熟練外科医から若手外科医へ」は、くわばら医院の桑原正知先生に、“熟練外科医を目指す若き外科医へ”というご講演をして頂きました。先生は宮崎医科大学1期生で、岡山大学医学部第一外科へ入局され、国立岩国病院、国立循環器病センター、宮崎大学第二外科心臓血管グループ、県立延岡病院心臓血管外科、くわばら医院を開業された中で、熟練外科医になるための7箇条。①目標となる医師、多くの恩師に出会う、②多くの手術経験、③チーム医療、④上手な説明、⑤資格の取得、➅学会発表と論文作成、⑦研究について説明して頂きました。患者への説明時には、全員に署名して頂く、資格取得は個人の為だけでは無く、後輩や施設の為になる。論文はお世話になった先生へのお礼である。特に何よりも楽しく満足できる日々をおくることが大切であると話されました。宮崎大学心臓血管外科教授の古川貢之先生より最後にお言葉を頂きました。夜遅くまでの講演会でしたが、多数ご参加頂き有難う御座いました。一般演題に発表された先生には是非論文にして頂きたいと思います。宜しくお願いします。尚宮崎県外科医会HPに「熟練外科医から若手外科医へ」はビデオ閲覧できますのでご覧下さい。

次世代の臨床外科医のための特別セミナー報告

宮崎大学医学部附属病院外科 坂元 紀彦 先生
宮崎大学医学部附属病院外科 荒木 裕介 先生
宮崎県立延岡病院 鈴木 裕紀子 先生

202423日、4日に東京・品川で開催された第12回次世代の臨床外科医のための特別セミナーに宮崎県代表として参加した。働き方改革やロボット手術など現在のトピックから、臨床研究や地域医療、海外での勤務など幅広い視点での外科医として働き方やあるべき姿の一つを教えていただいた。手術手技パネルでは同世代の先生方がまだ私の経験のない胃や大腸の腹腔鏡手術をされているビデオ発表を見て、手技に関する学びとともに、一歩も二歩も先を進んでいる先生がいて追いつくためにはまだまだ頑張らないといけないと強く感じた。懇親会も含め、参加している若手外科医と話す機会が多々あり、勉強方法や今後のビジョンなどを共有でき、新たな発見、取り入れたいと思うこともあった。セミナーを通して知識的なことを学べた他にも、私と同じように日々の診療に当たられている先生方の存在を意識できたことは非常に有意義であった。(坂元 紀彦 先生)

2024年23-4日に東京で開催された「第12回次世代の臨床外科医のための特別セミナー」に参加した。全国から同世代の外科専攻医が多く参加し、他施設での研修について意見交換し交流を図ることができた。講演では福島県立医科大学の本多教授より「腸蠕動音のメカニズム」「胃全摘後の飲酒の安全性」などの実際に行った研究についてご提示いただき、日常診療のふとした疑問を調べ論文にすること、研究に対するハードルを低くもつことの重要性を学んだ。また自分より1学年上の先生の腹腔鏡下胃全摘術や高難易度の腹腔鏡下胆嚢摘出術のビデオを拝見し、その技量の高さに刺激を受けた。2日間を通じて特に感じたことは、どの先生方も家庭の時間を大切にされていたことであった。外科医として知見、手技の向上を目指すとともに一個人としての時間をもつことも大切だと感じた。

このような貴重なセミナーに参加させていただき、日本臨床外科学会ならびに宮崎県外科医会の皆様に深く感謝申し上げます。(荒木 裕介 先生)

国内外科研修報告

 

宮崎大学医学部附属病院外科学講座 落合 貴裕 先生

2023年度日本臨床外科学会の国内外科研修制度により2023年9月4日から9月29日までの4週間,獨協医科大学上部消化管外科で研修をさせて頂きました.2022年より獨協医科大学上部消化管外科教授の小嶋一幸先生にビデオクリニックでご指導して頂いており,小嶋先生の下でさらに胃切除術を学び、解剖の理解や手術技術の向上につなげたいと考え、獨協医科大学での研修を希望しました.

獨協科大学では胃切除に関してロボット支援下手術が主に行われており,ロボット支援下手術の経験に乏しい自分にはとても刺激的でした.ダビンチファーストアシスタントプログラムにも参加して助手の資格を取得し,ダビンチトレーニングでは実際に動物の胆嚢を用いて術者として胆嚢摘出術を行いました.また,自分よりも若い先生方が1人で助手に入り,ロボット手術をたくさん経験している姿には羨ましさや焦りなどを感じました.

腹腔鏡下手術に関しては症例が少なかったものの,空いた時間に視野展開の方法や手順に関して質問し、当院でのLDGを含めた胃切除の定型化に向けて協力して頂きました.胃癌手術の他にも食道癌手術に参加し、再建経路の違いや食道胃接合部癌の際の胸腔内吻合など自分が経験していない症例,手技を直に経験することが出来ました.

加えて,韓国で開催されたKINGA WEEK 2023 や勉強会にも多く同行しました.国際学会への参加の話を聞いた際には大変驚きましたが,貴重な経験をすることができて大変感謝しております.

研修で学んだことを日々の診療に活かせるように,より一層努力していきたいと思います.今回,研修の機会を与えていただき,推薦してくださいました宮崎大学外科学講座の七島篤志教授,古川貢之教授をはじめ,研修に送り出してくださった同講座医局の先生方にもこの場を借りて感謝申し上げます.

熟練外科医から若手外科医へ

医療法人敏悠会 くわばら医院 院長 桑原 正知 先生

熟練外科医を目指す若き外科医へ

私は医学生の時には外科医と決めていました。卒業して麻酔科、小児外科、消化器外科、心臓外科などの研修を受けましたがある症例を介して出会った心臓外科医に憧れて心臓血管外科医を目指しました。当時日本一の手術数を誇る国立循環器病センター(現:国立循環器病研究センター)でレジデントとして3年間修練を受けて宮崎大学へ帰りました。大学病院で執刀していましたが県立延岡病院が新築されて心臓血管外科が新設されることになり教授の命を受けて若い先生2人と共に赴任して手術を始めました。目標は熟練心臓血管外科医でした。

私が考える熟練外科医になるための7箇条。①目標となる医師、多くの恩師に出会いましょう。②多くの手術を経験しましょう。③トップになって手術チームを築きましょう。④上手な説明をしましょう。⑤資格を取りましょう。⑥学会発表をし論文を書きましょう。⑦研究をしましょう。そしてなにより楽しく満足できる日々をおくりながらこの七箇条に挑戦しましょう。

外科医とはまずは腕が立つこと、人間性や社会性は医者として当然ですが外科医は手術が下手ではどうしようもありません。厳しいですがやりがいも大きい。瀕死で担ぎ込まれて来た人が笑顔で歩いて帰る。それを見送る気持ちはかけがえのないものです。そして手術力をつけること。手術の適応、術式を吟味、検討する能力、術野を整えて冷静に手術を進行し手術メンバーをチームとしてまとめていく力です。また口下手ではいけません。相手の理解力に合わせて分かりやすく説明することが大切です。学会発表が役立ちます。

論文を書くことは症例や疾患について勉強してまとめて自分の得意分野にする、引き出しを増やすことになり重要なことですが、私にはもう一つ論文を書く目的があります。御指導頂いた先生に対するお礼です。自分が筆頭著者でセカンドネームにお世話になった先生の名前を入れ完成した論文をその先生に謹呈することで感謝の気持ちとしてきました。資格も研究も自分のためだけではありません。

自分がどの程度の外科医かは周りが判断することですが、自分の経験を語ることが少しでも若い外科医の役に立てれば幸甚です。