平成30年度宮崎県外科医会冬期講演会

私が経験した訴訟症例、訴訟になりそうであった症例の検討、等々
熟練外科医?から若手外科医へ

社会医療法人善仁会 宮崎善仁会病院
関屋 亮

外科医になりあっという間に月日が過ぎていきます。まだ楽しく手術を行っていますが、いつまで行っていいのかいつも悩んでいます。鏡視下手術も多く、器械の進歩もあり、術野はまだよく見えています。いつの間にか熟練医師?になってしまい、まだ何も完璧にできるものはありません。いつも悩みつつ、患者さんに教えられつつ、日々勉強しながら医療を続けている状況です。

私は、心臓血管外科、食道疾患、肺疾患等の胸部外科症例、腹部外科症例、特に心機能や肺機能に合併症の多い患者を多く診てきました。そのため死亡症例も多数経験してきました。これが外科医の宿命と考えています。

私の訴訟の経験は、刑事事件でなくすべて民事事件です。私(訴えられたのは、病院長である医師会長でしたが)が対応した初めての訴訟は、食物アレルギー時に強力ミノファーゲンシー静注を行った後の死亡症例でした。1998年から5年間ほど裁判を行い、結果的に示談となり一千万円近くで解決しました。次は大学病院時代で、訴えられたのは文部大臣でしたが、直腸癌術後縫合不全での死亡例です。1995年から7年ほど裁判を行い、結果的に一審では勝訴しましたが、二審では敗訴し8500万円ほど支払いました。

一旦裁判に携わると疲弊し、やりたい医療ができなくなります。訴訟によって、外科を辞めていった医師や急性期の医療から身を引いていった医師を見てきました。

訴訟にならないためには①よく説明すること、②カルテに記載することが大切であることは分かっています。皆さんもよく理解されていることでしょう。

但し、一旦裁判になった時は、上司ができるだけ当事者を助けることさらにできるだけ当事者を裁判に行かせないようにすることが大切です。できるだけ優秀な弁護士にお任せすることが一番だと思います。保険には必ず入っておいた方がいいでしょう。

現在まで当院でも訴訟になりそうな事案はありました。現在も新しい訴訟が始まっています。私が当院に着任前の事例ですが、今回は私自身が被告になり約1億円で訴えられています。裁判に関しては弁護士に総てお任せし、私達は医師として、患者さんのために精一杯尽くしていくべきだと思います。