過去40年間に外科診療は拡大手術から縮小、低侵襲手術へと変遷してき ました。特に鏡視下手術の進化は目覚ましく、近い将来にはRoboticsurgeryが 主流になるのでは?、遠隔手術が可能になるのでは?、などと囃されてます。 一方で現状のダビンチ手術には、医療経済的・マンパワー的に厳しいこと、執 刀医が限定されること、触覚がなく操作制限もあること、など解決されるべき 問題が多々あります。鏡視下手術では、高難易度症例やトラブル回避を要する 緊急事態に対処するのが容易ではなく、時として開腹下または開胸下での剥離 操作、縫合・結紮止血、手縫い吻合などが必要になります。余計なお世話と笑 われそうですが、ラパロ世代の若手外科医達がこれらの外科基本手技に習熟し ていないこと、その機会が少ないことがとても心配です。個々の症例に応じて 直視・直達下手術と先進的鏡視下手術の両者をうまく使い分けながら安全・確 実な手術を行って欲しいと思います。先般、ノーベル賞を受賞された本庶先生 の言葉に研究者には3つのC:Cntinuation,Concentration,Confidenceが必 要>とあります。我々臨床外科医にもこの3Cが当てはまると思います。日々 の診療において、全ての症例を大切に吟味検討すれば、いつの間にか膨大な経 験を積み上げることになり自信も芽生え外科医として成長できるはずです。今 後とも次世代を担う若手外科医の活躍に期待したい思います。
県立宮崎病院 統括副院長(兼)外科部長 上田 祐滋